丸山久子(1909~1986)は、藤沢市教育文化研究所に籍を置いた柳田國男門下の民俗学者で、藤沢市における民俗学研究を確立させた人物でもあります。
 民俗学は生活習俗を記録し研究する学問であり、人々の意識や信仰を理解することを目的とします。丸山が特に重視したフィールドは遠藤地区で、高度経済成長前後の暮らしぶりが多く記録されました。藤沢市は、戦後の都市化にともなう変化が激しい都市であり、丸山の活動により、かつての人々の暮らしや習俗が辛うじて記録されたとも言えます。
 丸山の没後、膨大な資料群である「丸山文庫」が遺され、現在も整理を続けています。昨年度、文書館では『歴史をひもとく藤沢の資料』シリーズで遠藤地区を取り上げ、これにあわせて「丸山文庫」の整理を進めましたが、作業を通じて、慣例として行われる行事には、それぞれ意味や祈りが込められていることを再認識させられました。
 今回の展示は、「丸山文庫」を中心に、資料を通じて遠藤地区の生活文化をご紹介します。ところで、民俗学は多くの民具を収集し、違いや分布から地域の独自性を見出す学問でもありますが、展示可能な資料に限りがあることをお詫び申し上げます。
 最後になりましたが、貴重な資料をご提供いただいた資料所蔵者の皆様や、ご協力いただいた関係機関の方々に、この場をお借りしてお礼申し上げます。

 2023(令和5)年10月30日
      藤沢市文書館長